尾形光琳の屏風絵の前に立つ 宇宙を感じる
先日、お休みをいただいて熱海にあるMOA美術館に行ってきました。目的は尾形光琳の紅白梅図屏風です。きっと皆さんも歴史資料集でご覧になられたこともあるあの国宝の屏風絵です。
紅白梅図屏風は江戸時代の絵師・尾形光琳が描いたのですが、未だ何を目的に描いたのか真意がわからない謎の絵です。また、所蔵されていた倉庫が消失のところ間一髪で戦火を免れたこと、海外に流失することなく国内に留まり続けているところなど数奇なエピソードがいくつもあるところもミステリアス。今までの絵になかった斬新な構図やデザインから宇宙観すら感じる不思議な絵です。
例えば、左右に梅の木がありますが、その背景には何も描かれていません。一方、中央に川のようなものが流れていますが、その中は模様が一面に描かれています。私はここに宇宙観を強く感じます。
またこのような観点もあります。左右の木はいかつく描かれていて男性的です。一方、中央の川は滑らかな曲線で描かれていて女性的です。このような見方をすると生命力を感じませんか。
さらに、左右の梅木の大きさが異なるところからは、この世とあの世を現していて、中央の川が二つの世界を隔てる三途の川にも見えてきて、人生とは何だ?と考えさせられます。
他にも老木と若木、清と濁など、対比が多く含まれていて何かが隠されているのだろうと勘繰ってしまいます。しかし読み解けないところがもどかしくもあり、宇宙とも通じますね。
屏風絵を前に立っていると、頭の中にさまざまなことが喚起されます。不思議な体験でした。きっと10人いれば10人の見方ができるような不思議な絵なのでしょう。まるでピカソのキュビズムのようです。誰がどのように読み取ろうともそれが正解。どれもが正解。それこそがアートなのでしょう。これが国宝、超一流作品を言われる所以であると私は思います。
2022/03/30 Category | blog