人の役に立つ喜びを教える


中学受験の難しさは、受験生の人間性の育みにあります。



志望校合格に向けて、人としての在り方よりも受験勉強ばかりさせると、合格はできるかもしれませんが、数年後にお子さんが精神に支障をきたし、引き籠り、過激な反抗、命を絶つケースがあります。その一方、人としての在り方を学びながら受験勉強に励んだ受験生は、合格不合格に関わらず、親や友達から支えられ豊かに生きていきます。今までそんなケースをたくさん見てきました。



中学受験は、人生経験の乏しいお子さんには判断できないことがたくさんあります。だからお父さん・お母さんの言うことに従わざるを得ません。そこでお父さん・お母さんが、お子さんが勉強できない(有名学校に進学しない)と認めてくれないような親子関係が常態化していると、生きていくためには”勉強さえできればいい”と考えてしまう可能性があります(従順なお子さんほどこの傾向になるようです)。これではあまりにも寂しすぎます。人間性が育まれていないために視野が狭いし、主観的になり、生きにくくなっていく傾向があるように思います。



親が子を志望校に合格させてあげたいがために(親自身が子どもが有名校に通っているという満足を得たいがために)勉強に熱が入りすぎて、人間性を育むことを蔑ろにして、その子の成長を曲げてしまうところに、中学受験の難しさがあります。小6受験生は、10代を迎えたばかりの年頃。成長期真っ只中です。今こそ人間性を思い切り育ませてあげてほしいと思います。





なぜ、今私がそのような話をするのか?



それは秋になると親子関係の相談が増えるからです。





中学受験では、お父さん・お母さんに熱が入りすぎると、その様子がなんらかの形となって現れてきます。



子が思うように結果を出せない不安、親の執拗な叱責、家庭内に鎮座する大きくて重いプレッシャーなど負の要因が、子どもの精神を不安定にさせ、”うるせー! クソ、ババア!!”と叫ぶようになったり、さらに悪態化すると新聞沙汰となる事件へ発展させてしまうことすらあります。無事に志望校に合格できたとしても、入学後、3年後、10年後に精神を病んでしまうケースが多いと、精神科医の先生からお話を伺ったばかりです。



お父さん・お母さんはこのような事態を望んでいませんよね。一番大切なことは、勉強ができることではありません。お子さんが笑顔でそこにいてくれることではないでしょうか。今、このことを再確認していただけませんか。お子さんの存在そのものを認める秋としてほしいのです。これができているご家庭に、中学受験に挑んでほしいと私は切に願います。





勉強ができるに越したとことはありませんが、これをお子さんの評価基準の第一としてはいけません。では、第一としたいことはなんでしょうか?



それは、「人の役に立つ嬉しさを持つこと」です。人の役に立つ喜びというのは、そのこと自体が喜びでもあるわけですから、何かを返す必要もない。相手からも何か見返りを求めることもできない。友達のために、クラスのために、学校のためにしたことでみんなが喜んでくれた時に「人の笑顔を見ることがうれしいな」と思えることです。このような心の成長が、本当の意味でのお子さんの自立になっていきます。



では、どのようにしたらいいかというと、お父さん・お母さんから「ありがとう」「助かったよ」「嬉しかったよ」と言葉にしてメッセージを伝えていくのです。この一言が、子どもの人間性を育んでいくのですね。



私は、中学受験の指導をして23年間になりますが、約1000件のご家庭とお付き合いさせていただいて思うことを書かせていただきました。










2022/09/06 Category | blog 



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