JAZZと落語とお寺


日曜日の昼下がり、ちょっと変わったライブを観に行ってきました。





場所はお寺の本堂。



本堂の中に敷かれた畳の上を茶革のウィングチップを履いたサックスプレーヤーが、ジャズピアニストとジャズボーカリストを率いて登場。





えっ、畳の上に革靴?





お寺の本堂とジャズ。初めて目にするミスマッチな光景。しかし動揺しながら聴いたのは最初だけでした。



第一音、第一声を聴いただけで、すぐそれとわかったからです。繊細な音と伸びやかな声。上手いのです。とにかく演奏が上手い。歌が上手い。



超一流が持つ細部の細やかさに最後まで酔いしれました。





こんなとき私はよく思います。



演奏者が神がかった演奏をするとき、ギリシア神話に登場する音楽の女神ミューズが宿っているのではないかと。このように本気で思うのですが、みなさんもそう思ったことありませんか? 神は細部に宿ると言われます。私はこの日、ミューズを観た気がしました。



超一流だったのは演奏や歌声だけではありません。「旅」をテーマに、ジャズの名曲からビリー・ジョエル、テレサ・テンまでも聴かせてくれたセット・リストも素晴らしかったです。聴衆を楽しませることにも決して手を抜かない完璧なサービスぶり。さすがですね、繊細と完璧、全てが超一流で仕立て上げられたジャズライブでした。



ジャズライブが終われば畳の上の革靴にも納得。演奏者にとってはこれがプロ意識のゾーンに入るための道具だったのでしょう。全てにおいて完璧、超一流でした。





実はこのライブ、まだ続きます。



一流のジャズに酔いしれた後は落語のライブです。



プロの落語家の登場です。



落語を生業としているのですから、当然上手いです。グイグイと引き込まれる話法にあっという間の1時間。こちらも細部をとても大事にされるパフォーマンスに圧巻。会場の雰囲気を掴みながら話の内容を決める「枕」からして神業です。時間が経つにつれて、表情、声の大きさ、話すスピードを自在に操り会場を沸かす話し家はすごかったです。





この日は、ジャズと落語を合わせた二時間のライブに大興奮して会場のお寺を後にしましたが、実はまだ続きます。





帰りの車の中のことです。





それは妻と話しているときに気付かされました。





この日は、ライブを企画した住職さんのお母さんのお誕生日だったのです。本当は母の日に開催する予定だったそうですが、コロナ禍のため開催を泣く泣く延期。お母さんの誕生日に開催を決めたのでした。住職はサックスを50歳を過ぎてから習い始めたそうです。この日もプロの方達に混じって演奏する場面もあり、微笑ましくありましたが、今思うとお母さんを喜ばせるためのものでした。ジャズ演奏と落語は住職からお母さんへのプレゼント。お母さんへ捧げた感謝と愛の気持ち。なぜこの日にジャズと落語のライブを開催したのか、その意図を知り、私は感動してしまいました。企画した住職もまた超一流、愛と感謝を捧げるプロフェッショナルでした。



一流に触れて心振るわせる体験はとても豊かな体験です。特に多感なゴールデンエイジにこそ体験してほしいです。憧れ、価値判断、達成感の指標として視座が高まり、自分自身を成長させてくれるからです。この体験と勉強が両輪になったとき、社会の課題を解決するイノベーションが起きると私は信じて疑いません。これを将来を担う子どもたちに伝えていくのも私の役目ですね。






2022/10/13 Category | blog 



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