作品の向こう側へ – 小学生と読んだ『勝負事』『杯』『夢十夜』
文学作品を読むとき、私たちはまず自然と感情的な反応を示します。「かわいそう」「驚いた」「不思議だな」という素直な感想は、作品を理解する大切な第一歩です。しかし、そこからもう一歩踏み込んで、作者が私たちに伝えたかったメッセージを探る時、作品はより深い輝きを放ち始めます。
12月25日の読書講座では、菊池寛『勝負事』、森鴎外『杯』、夏目漱石『夢十夜』という三つの名作を小学生の皆さんと一緒に読み進めました。最初は「主人公がかわいそう」「こんな展開になるとは思わなかった」という感想から始まりましたが、対話を重ねるうちに、子どもたちは作品の新しい一面を見つけ始めました。
例えば、『勝負事』を読んだ際、ある生徒は「なぜ作者は負けた人の気持ちを詳しく書いているんだろう」と疑問を投げかけました。この問いをきっかけに、勝負に対する人間の姿勢や、勝負に込められた意味について、活発な意見交換が生まれました。
文学作品を深く読むということは、登場人物の行動や感情を自分の経験と重ね合わせながら、その向こう側にある普遍的なテーマを見出すことでもあります。子どもたちは、作品を通じて人間の本質的な姿や生き方について考える機会を得たのではないでしょうか。
私たち大人にできることは、子どもたちの素直な感想を大切にしながら、「なぜ」「どうして」という問いを一緒に探求していくことです。それは、文学作品を読む楽しみを広げるだけでなく、人生を深く見つめる目を育てることにもつながるのではないでしょうか。
2024/12/26 Category | blog
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