受験期の子どもの成長を見つめ直す―偏差値だけではない―

今回のブログでは、実際の入塾相談でよくお聞きする声をもとに、物語仕立てでお届けします。お子さんの成長に寄り添う視点について、一緒に考えてみませんか。

「先生、偏差値至上主義って、本当に正しいのでしょうか」

初めて訪れた塾の個別相談で、中学2年生の息子の模試の成績表を広げながら、私は溜めていた思いを正直に打ち明けました。

息子が現在通っている塾では、模試の結果だけが話題の中心で、「次回の模試までに偏差値を3上げましょう」「この単元を完璧にしないと」と、具体的な数値目標を示されます。確かにその方が分かりやすい。でも、息子の表情が徐々に曇っていくのを見て、不安が募っていきました。

しかし、その面談中、先生はこれまでに聞いたことがない質問を投げかけてきました。

「お母さん、お子さんの最近の様子はいかがですか?」

私は少し戸惑いました。今まで、こんな質問をされたことがなかったからです。

「そうですね…実は先週、息子が自分から図書館に行って3時間も勉強してきたんです。でも、塾から指示された単語テストの範囲は終わっていなくて…」

「自分から図書館に行くようになったんですね。それは大きな変化だと思います。以前はどうでしたか?」

「半年前は『勉強なんて意味ない』と言っていたんです。でも、最近は自分なりのペースで…」

話しているうちに、私自身、息子の変化に気がつきました。

「実は、塾選びに悩まれるご家庭でよく聞く話なんです。点数や偏差値は確かに大切な指標です。でも、その数字の向こう側にある、お子様の努力や成長のプロセスにも、同じくらい大きな価値があるんです」

先生は、これまで見てきた多くの受験生とその家族の話を聞かせてくれました。最初は成績が伸び悩んでも、自分なりの学習方法を見つけ、それを少しずつ改善していった生徒たちの話。そして、そのプロセスを支え続けた親の存在が、子どもたちの大きな励みになっていたという話。

「毎回の模試の点数も大切ですが、その結果に至るまでの過程で、お子さんが何を学び、どう工夫したのか。それを一緒に見守り、支えていくことも、私たちの大切な役割だと考えています」

帰り際、私の中で何かが変わり始めていることを感じました。

それから1週間。息子が夕食時に「今日の数学、最初は全然分からなかったけど、図を描いてみたら解けた!」と話してくれた時、私は以前とは違う気持ちで聞くことができました。

「へえ、図を描くっていいアイデアだね。どんな図を描いたの?」

息子は嬉しそうに、ノートを広げて説明してくれました。以前の私なら「でも、今の塾の進度に間に合うの?」と心配していたかもしれません。でも今は、息子なりの工夫を見つけ出せたことが何よりも嬉しく感じられます。

先日の相談から1ヶ月。息子の偏差値は、まだ目標には届いていません。でも、彼なりのペースで確実に前に進んでいることは、確かに感じられます。

「お母さん、塾を変えてもいい?」

その言葉を聞いた時、私の心は既に決まっていました。息子が自分で考え、工夫する力を育める環境。そして、その成長のプロセスを大切にしてくれる場所。それこそが、私たちが本当に求めていたものだったのだと。
偏差値は大切ですが、それ以上に子供の成長や努力を認め、一緒に歩む姿勢が親として求められているのではないでしょうか?これから、受験するお子さんがいらっしゃるなら、この話を片隅に置いてほしいなと思います。


2025/01/25 Category | blog 



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