間違いを恐れる子どもの背中を押すには
小学生が正解することばかりに意識を向け、チャレンジできなくなる姿を見ると、親としてどう接したらいいか迷ってしまいますね。間違えることを極端に恐れる子どもは、新しいことに挑戦する喜びよりも「失敗したらどうしよう」という不安が勝ってしまいます。
なぜ子どもは正解にこだわってしまうのか
子どもが「正解」にこだわりすぎる背景には、いくつかの理由があります。
「間違えると叱られる」という経験の積み重ね、「周りの子と比べられる」という緊張感、そして「自分は間違えてはいけない」という完璧主義的な思考パターンなどが考えられます。
以前、ある小学4年生の女の子は、算数の問題を解く時に消しゴムをすり減らすほど何度も書き直し、結局時間切れで提出できないことがありました。話を聞くと「先生に間違いを見つけられるのが怖い」と言うのです。
子どもが「正解」という狭い枠から抜け出せるよう、親としてできることを考えてみましょう。
挑戦を促す「良い先回り」
東京家政大学の岩立京子教授が提唱する「良い先回り」という考え方があります。これは子どもの挑戦のハードルを下げる工夫をすることです。
例えば、算数の問題に取り組むときは、一度に10問解かせるのではなく、4問ずつ小分けにして答え合わせをする。こうすれば、間違いがあってもすぐに修正でき、「わからない」という状態が長く続かずに済みます。
浜松西高中等部を目指す生徒の親御さんから聞いた話ですが、お子さんが計算ミスを繰り返すことに悩んでいました。そこで「計算は必ず別紙でやり、それを見直す習慣をつける」という小さなルールを作りました。その結果、ミスが大幅に減り、「算数は得意」という自信につながったそうです。
「間違い」を「発見」に変える言葉かけ
子どもが間違えたとき、どう声をかけるかが重要です。「違うよ!」と指摘するのではなく、「これってこうだっけ?」と疑問形で問いかけてみましょう。
面談で、あるお母さんから聞いたお話ですが、お子さんが学校で作文を書くのを嫌がっていたそうです。よく話を聞くと「先生に赤ペンでたくさん直されるのが嫌だ」と言うのです。そこで私は「作文は正解がないんだよ。自分の考えを伝えることが大事なんだ」と話し、まずは書いてみることを勧めました。少しずつですが、自分の言葉で表現する楽しさを感じ始めています。
「ものを見るときは真ん中だけではなく、周辺もよく見ること。物事を理解するには、真ん中と周辺の両方をよく考えること」と私はよく言います。間違いを単に「ダメなこと」として真正面から否定するのではなく、その周辺にある「なぜそう考えたのか」という思考プロセスにも目を向けることが大切です。
成功体験を積み重ねる工夫
子どもが挑戦しやすい環境を作るには、以下のような工夫が効果的です:
- 簡単なことから始める:まずは確実に成功できる易しい課題から取り組ませる
- 時間管理の練習:タイマーを使って「今回は5分間だけチャレンジしてみよう」など、有限の時間設定にする
- 間違いの分析:間違えた問題について「どうしてそう考えたの?」と思考過程を言語化させる
静大附属浜松中に合格した生徒のお母さんは「うちの子は間違えることを極端に恐れていたので、まず『間違えたらどうなる?』と問いかけ、実際に間違えても大したことにならないという体験をさせました」と教えてくれました。実体験から「間違えても大丈夫」という安心感を得ることで、少しずつ積極的に取り組めるようになったそうです。
最後に大切なこと
「限界は自分で作らない」という言葉も塾で私はよく使います。子どもが自ら「これはできない」と線引きしてしまうと、その先の成長の可能性も閉ざしてしまいます。
親として大切なのは、結果だけでなく挑戦する姿勢そのものを認め、プロセスを共に喜ぶことです。「間違えてもいいから、自分の考えを言ってみて」という声かけを繰り返し、自分で考え、判断する力を育んでいきましょう。
読書好きな子どもは、多様な考え方や視点に触れることで、「正解は一つではない」という柔軟な思考を自然と身につけていきます。親子で本を読み、「この主人公はどうして○○したと思う?」と問いかけるのも良いでしょう。
子どもの挑戦を見守る親の姿勢が、将来の「自ら考え、行動する力」の土台となります。焦らず、寄り添いながら、一緒に成長していきましょう。
2025/03/11 Category | blog
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